CW/CD インタビュー

2021年9月17日

数々の成功者たちが、毎日同じ服を着続けているという話はあまりにも有名だ。Appleの創業者であるスティーブ・ジョブス、Facebookの創設者 マーク・ザッカーバーグ、元アメリカ大統領のバラク・オバマや、ファッション界を牽引したカール・ラガーフェルド。また、相対性理論で名高いアルベルト・アインシュタインも常に同じ洋服を着続けていたのだとか。近年、ミニマリスト、ノーム・コアブームの影響もあり、“同じ服を着続ける“ということは、昔よりもポジティブに受け止められ、もはやスタンダードになりつつある。

「いつでも着たい、いつでも着られるTシャツ」をコンセプトに今夏始動したCW/CDは、IT, Web業界で活動してきたディレクターのtakuroと、ファッション業界で自身のブランド(semoh)を運営しているデザイナーの上山浩征によるサブスクリプション(定期購入)型のTシャツデリバリーサービスだ。以下のインタビューでは、このプロジェクトを運営する2人に、このプロジェクトを始めたきっかけとTシャツへの想いを語ってもらった。

CW/CD ディレクター takuro

まず初めに、CW/CDとは?

takuro:CW/CDは、サブスクリプション(定期購入)型のサービスで、コンセプトである「いつでも着たい、いつでも着られるTシャツ」を提供しています。Tシャツは、無地のシンプルなもので、WHITEとBLACKの2色、サイズは1、2、3の3サイズ展開です。サブスクリプションですので、会員登録をして定期購入いただいたユーザーの方に、毎回買い物に行かなくても定期的に着たいTシャツをお届けする、というサービスです。また定期的に会員限定・購入者限定のコンテンツを配信しています。

CW/CDを始めたきっかけは?

takuro:一緒に運営しているひろさんと話している時に思いついたアイディアなのですが、そもそもは普段、自分が面倒だと思っていること——自分の抱えている課題を解決したいと思ったことが大きなきっかけです。

Ueyama:僕はもともとサブスクリプション・サービスに興味があって。洋服はsemoh(自身のブランド)を作っているので、何かやるのなら洋服以外でと考えていたのですが、「使い捨てじゃない無地のTシャツ」を存在させるために、かなり挑戦になるけどやってみようと思いました。

なるほど、takuroさんの「抱えている課題」とは、どんなことですか?

takuro:普段、「シンプルでおしゃれな洋服を着たい」という気持ちはあるのですが、仕事もプライベートも忙しい毎日を過ごしていると、あまり買い物に行けなかったり、正直どこで何を買えばいいのかを考えるのも大変です。以前、友人に「いつも同じTシャツを着てるね」「古いTシャツ着てるね」と言われてハッとすることがありました(笑)

Ueyama:生活を共にする家族や恋人、パートナーがいる人は「これは人前で着れないよ」などと言ってもらえるけど、気付かないうちに古くなりすぎたものを着ていることってありますよね。自分の周りにも、古くなったTシャツを着てる人は結構いるので、できるだけ定期的に買い換えるようにしてもらいたいな(笑)

takuro:自分がTシャツを選ぶときは着心地を重視しているのですが、着心地が良いかどうかは大体買った後に気づくことが多いですし、着続けているうちに気に入ってリピートしたくても、どこで買ったかわからないとか商品自体無くなっていたりすることもあって。そういったことも解決できるといいなと思っていました。

実際、シンプルな無地のTシャツって何枚あっても困らないですが、「着心地が良いお気に入りの一枚」を見つけるのは、なかなか難しいですよね。

takuro:そうですね。仕事もプライベートも忙しく頑張っていらっしゃる方たちの中で、私と同じような思いや課題を抱えている人たちに、少しでも生活が豊かになるように活用していただけたらなと思っています。

先ほどひろさんの「使い捨てじゃないTシャツをつくる」というお話がありましたが、CW/CDのTシャツの、洋服としてのこだわりはどんな部分ですか?

Ueyama:生地と縫製に、洋服屋目線でのしっかりとしたクオリティを保ちながら、コスパが良いところですね。毎月継続的に購入してもらうことを前提とした金額設定になっているので、通常であればこの金額では購入できないと断言できます。単純にものの価値としては、1枚買っただけでお得である。買えば買うほどお得です(笑)

例えばよくある量産品と比べると、具体的にどんな特徴がありますか?

Ueyama:何枚増えてもいいシンプルで着心地の良いTシャツをお届けするので、それに伴った仕様を組んでいます。Tシャツで重要となるシルエットは、首と腕、身体を通す部分の伸縮性や幅の広さを考慮し、着やすさと見栄えが両立できるよう、カットソーの縫製クオリティが高い日本の工場のご協力のもと作っています。あとは、例えば雑な洗い方をした時にどれくらい伸びるかといった、強度を保ちながらも硬くならないような着地点。袖や裾先の一部分だけが伸びることを防ぐための縫製を行なっているので、生地全体が柔らかく経年していきます。

素材は?

Ueyama:素材は天然素材である綿を使っていますが、いわゆるTシャツの中では少し細い糸を使うことで最初から生地に柔らかさが生まれていて、洗濯をすることでさらに柔らかくなりますが、ヨレヨレにはなりません。綿100%にしたのは、吸水性が高く通気性も良い、さらに肌触りも良い。より自然であることも理由ですが、それが一番無理のないことでもあるからです。

ところで、お二人はどのくらいTシャツを持っていますか?

takuro:20~30枚持ってます。一軍、二軍、三軍って呼んでるんですけど…。人前で一枚でも着られる「一軍」、ジャケットの下やインナーとして着られる「二軍」、あとは人前では着られなくなって部屋着になる「三軍」(笑)。なんだかんだで、二軍から三軍にするまでに粘っちゃうんですよね…。

Ueyama:僕もインナーなども含めれば、かなりの枚数持っていますね。僕は以前、Tシャツを着ることをやめた経験があります。理由は、すぐに古くなって着れなくなるから…。今はまた着るようになりましたが、そういった時期を経て、今自分で作るものは、自分で持っていてもいい、着ようと思うTシャツですね。

確かにTシャツって、安くて良いと思って買っても、数回洗濯したらすぐに1枚では着られなくなることもよくありますね。

Ueyama:そういう意味では、CW/CDのTシャツは、takuroくんの言う経年とともに変化するポジション、一軍から二軍までの期間が長いものだと言えます。最終的には捨てるないし雑巾になるけれど、そこにいくまでの道のりが長いTシャツ。まずは綺麗な状態のものを長く着てもらうのを選択できるし、雑に扱って擦れていっても、部屋着になっていく。服のわかりやすいプロセスを、このシンプルなTシャツで表現しました。

期間が長いというのは?

Ueyama:元々洋服は着られる期間が長いものだけれど、それを短くしているのが今の社会というか。使い捨て意識の、要は「今年着るためだけの洋服」というものの割合が多くなってきていたから、それを原点に戻すという考えです。活動としてはとてもシンプルですが、ビジネス的には難しいところに挑戦してみようと。

なるほど。普段違う業界で仕事をするお二人が組んでもの作りをすることも興味深いです。

Ueyama:takuroくんがITの領域にいて、オンラインの世界を作れる。それぞれの職種でお互いに生み出すことのできる環境があってこの価格で出すことができるから、一緒にやろうと思いました。最小のエネルギーで最大の世界を作り出すという(笑)そのコスパの良さにのって、毎月付き合って愛着の持てるただのTシャツに出会っていただけたら嬉しいですね。たかがTシャツだけどされどTシャツ。Tシャツの選び方も気をつけないと、自分の印象を損ねますよ、というところですね。

takuro:ひろさんはファッション領域、私はITの領域の人間なので、考え方は真逆のことも多々あり、普通だとやらないようなことをやれたりだとか、同業の人たちと一緒に仕事をしているのとはまた違う感覚だなと思っています。例えば、このサイトのコンテンツをクローズドにするという考え方だったり。通常のWebサービスだと、どれだけ広げるかというところがあるのですが、ロイヤルティを上げるためにこのようにクローズドにする、というところなどは私もやったことがなくてチャレンジだな、と思っています。

Ueyama:「洋服作り」という、時代が変わっても変わらない、人が手を動かして作るアナログと、コンピューター、ITを組み合わせることで、一番シンプルなことをやる。洋服とオンラインを組み合わせて、リアルな日常生活にそれを入れてみるっていうだけで、一つの買い物ですけど生活の引き算ができる。自信を持つために余計なものを省くことができると思います。

CW/CDのTシャツを、どんな人にきてもらいたいですか?

Ueyama:普段Tシャツを着る人にはもちろん着てもらいたいですね。生活の中で何も気にせずTシャツを着ていた人に、変化があると思うので。あとは普段シャツを着る人も、中にTシャツを着ていることも多いかと思うんですけど、中に着る前に外に着て、それを経たものを中に着るっていうのもやってみてもいいのかなと。本来シャツの中は分厚いとかさばるので、Uネックで薄い肌着を着たりするけど、最近は皆さんシャツのサイズ感も大きくなっていたりするから、ゆったりめのシャツの中に着るときも、汗もよく吸うし着心地が良いので、着てもらえるといいですね。

今後、CW/CDのオンラインサイトでは、さまざまな人達にインタビューをしながら「VOICE」をお届けする予定ですよね。

Ueyama:いろんなライフスタイルがある中で、インタビューしてみたいな、と思う生活スタイルを営んでいる人に話を聞いてみたいですね。CW/CDを定期購入してくれる人たちと、様々な価値観を共有するものを発信していくための読み物で、全てのコンテンツは会員様のために運営します。CW/CDというコミュニティでは、毎日全然違う生活をしていても、同じ「Tシャツ」を共有しているという共通点がある。Tシャツって、シャツ同様に全世界共通している普段着という洋服の面白さだと思うんです。話せば長くなるけど、極論、生活スタイルが違う人と同じ共通のものを持つことで多分世界が平和になるであろうと思っています。